グーグルと(株)ペンシルの共同セミナーに参加してきた

http://www.pencil.co.jp/openseminar/google20071213/

とてもいいセミナーだった。仕事が終わってからの3時間超で疲れたものの、それを大きく上回るパワーをもらったような気がする。グーグルの、というよりもタカヒロさん(http://mediologic.com/weblog/)の講演が楽しみで参加したのだけれど、ペンシルの覚田さんの講演も素晴らしかった。

unsolicited information

30分ほど遅れたため、高広さんの講演の途中からの参加となった。ちょうどテレビというものの歴史をひもといているところで、テレビ放送の開始が1953年だというお話をされて、その当時の様子を写真で紹介されていた。そこから「広告とは?」という話に繋がるわけだが、昔から広告というのは不必要な情報だったんじゃないか?という視点での捉え方で話が進んでいった。

つまり、unsolicited information だったんじゃないかということ。だって、テレビのCMタイムって「トイレタイム」だったよね?と。確かに僕らには「広告とはそういうものだ」という意識が強い。テレビにしたって、新聞にしたって、雑誌にしたって、およそマスと呼ばれるメディアの広告のほとんどはunsolicitedなものだ。

なぜ、要求もしてないの広告を見せられなければならなかったのかというと、結局は広告の手法が効率的でなかったということになる。要するに昔の広告は絨毯爆撃で、狙ってる人にも当然当たるだろうけど、そうでない人にも多く浴びせられていたのだ。

というところから具体的にアドワーズの話に入っていった。

悪事を働かなくても金儲けはできる

面白かったのは、グーグルの理念の話をされていたところだ。会社案内がこんなふうに刷新されていたなんて知らなかったわけだが、すごく読み応えのある内容になっていて驚いた。
http://www.google.co.jp/intl/ja/corporate/tenthings.html

そのなかに「Google が発見した 10 の事実」というのがあり、なかのひとつ「悪事を働かなくても金儲けはできる」というところで、ポイントとなる一節を紹介されていた。

Google は、広告というものはユーザーが必要としている情報と関連性がある場合にのみ役に立つと考えています。

広告というのはユーザーが必要としていた場合には「情報」になるということ。必要としていない場合の広告は相変わらず「広告」だということ。つまり、必要としていない情報を与えることは悪事であり、そんなことしなくてもユーザーの役に立つ情報を望んでいる人たちに届けることができる。そして、そのことによってお互いにハッピーな金儲けができるということなんだろう。このあたり、とてもすっきりと納得のできるところだった。

広告というものはそれを土台にしたビジネスがある限りなくなるはずもないが、消費者の方は今までの広告というものからどんどんと距離をとっていく。広告が効かなくなる時代はすでにやってきていて、だからこそ検索連動型広告というものがこれほど脚光を浴びているわけだが、しかし、それはマスのやり方じゃない。テレビも新聞も、雑誌もラジオも「今までのやり方」というものが通じなくなってきているけども、やめるわけにはいかず、そうなるとどうだろう。最終的には適正なバランスになっていくんじゃないか。今までマスの力というものが強すぎただけと思うのだ。

ずいぶんと前から言われていることだが、大衆から分衆へ、そして個という流れ。粒度がどんどん小さくなってきている。消費者のほうはそうして粒が小さくなってきているのに、社会がその尺度にあっていないところにギャップがあるということなんだろう。そして唯一マッチしているのが、ウェブである、と。

でも、待て。よくよく考えるとそんなに粒度は変わってないのかもしれないということも言えるんじゃないか。まだまだ分衆の部分も僕らは持っている。大衆にはなりえないけど、分衆と個の間で揺れ動いている。巨人でもなく、小人でもなく、その中間のメディアって言ったら一体何になるだろう?雑誌なんかはそうするとその中間になりうるのかもしれない。テレビでもケーブルテレビとか。ウェブのコミュニティにしても個というよりは分衆なのかなとも思う。

大枠の話でいくと、かつては企業から消費者に一方的に膨大な広告を浴びせていたわけだが、今では消費者のほうが力をもって情報を探しにいくという流れ。そのなかで大事になってくるのは「いかに見つけてもらうか?」ということと、「いかにコミュニケーションをとっていくか?」ということに尽きるというところで高広さんの講演は締められた。

大事なのは企業側からのコミュニケーション。だけど、実際それを実践するとなるとできていなところがほとんどだと思う。やり方はこれから蓄積されていくだろうけど、まだまだ一人一人の消費者に向き合えるという事実についていけていないのが実際のところだろう。可能性は開かれた。あとはその可能性をどう活かすかは自分たち次第。そんな感想を持った。

覚田さんの講演も素晴らしかったので、それについてもまた書きたい。